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空き家を放置したときに起きることは、大きく3つです。税の軽減が外れる、倒壊や落下で賠償責任を負う、市町村の措置が段階的に進むの3つで、いずれも「いつか」ではなく順序が決まっています。
多くの記事が「特定空家に指定されると税金が6倍になる」と書いていますが、これは正確ではありません。6倍の税が新しく課されるのではなく、それまで受けていた軽減が外れて元に戻るという意味です。しかも外れるのは指定の時点ではなく勧告を受けた時点です。
まず何がいつ起きるのかを順に見て、そのうえで、まだ結論を出せない場合にできることを整理します。
放置で起きること
| 何が起きるか | いつ起きるか | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 固定資産税の軽減が外れる | 勧告を受けた年の翌年度から | 小規模住宅用地なら課税標準が1/6から元に戻る |
| 倒壊・落下で賠償責任を負う | 損害が発生した時点 | 損害の内容による |
| 命令違反の過料 | 命令に従わなかったとき | 50万円以下 |
| 行政代執行の費用請求 | 代執行が行われたとき | 実際にかかった解体費用の全額 |
背景として、空き家は増え続けています。総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、空き家が899万戸、空き家率が13.8%で、いずれも過去最多・最高でした(総務省統計局)。自治体が空き家対策に力を入れているのはこのためです。
1. 税の軽減は「勧告」で外れる
住宅が建っている土地には住宅用地特例があり、固定資産税の課税標準が軽減されています。
| 区分 | 課税標準 |
|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 評価額の1/6 |
| 一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 評価額の1/3 |
この軽減は、市町村から勧告を受けると解除されます(国土交通省)。命令や代執行まで進む必要はありません。勧告の段階で外れます。
さらに、令和5年12月13日に施行された改正法(令和5年法律第50号)で、対象が広がりました。倒壊等の危険がある「特定空家等」だけでなく、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある「管理不全空家等」も、勧告を受ければ軽減が外れます(国土交通省)。
つまり「まだ倒れそうではないから大丈夫」という基準では、判断がずれます。
固定資産税は毎年1月1日時点の状況で課税されるため、勧告を受けた年の翌年度の課税から反映されます。実際の税額は土地の評価額や自治体の運用で変わるので、金額を知りたい場合は市区町村の資産税担当窓口で確認してください。
2. 倒壊や落下は所有者の責任になる
台風で瓦が飛んで隣家の車を傷つけた、ブロック塀が倒れて通行人がけがをした、といった場合の責任です。
民法717条は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があって他人に損害を生じたとき、まず占有者が賠償責任を負い、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは所有者が賠償しなければならない、と定めています(e-Gov 法令検索)。
空き家には占有者がいないため、所有者が責任を負う構図になります。遠方に住んでいて状態を知らなかった、という事情があっても、それだけで責任がなくなるわけではありません。
同じ条文の第2項では、竹木の栽植または支持の瑕疵にも同じ扱いが準用されます。庭木が倒れた、伸びた枝が落ちた場合も対象です。建物だけでなく、敷地の草木も管理の範囲に入ります。
具体的な責任の有無は事案ごとに判断されるため、実際にトラブルが起きた場合は弁護士に相談してください。
火災保険が使えないことがある
長く人が住んでいない建物は、火災保険の契約条件から外れることがあります。住宅物件ではなく一般物件として扱われる、契約の更新を断られる、といった扱いです。
いま加入している保険が空き家でも有効かどうかは、証券に書かれた用途と、保険会社への確認で分かります。放置している間ほど保険が切れやすいので、ここは早めに確認しておく項目です。
3. 市町村の措置は4段階で進む
行政の対応は、いきなり取り壊しになるわけではありません。次の順序で進みます。
- 助言・指導 — 状態の改善を求める働きかけ。法的な義務は生じない
- 勧告 — ここで住宅用地特例が外れる
- 命令 — 従わない場合は50万円以下の過料
- 行政代執行 — 市町村が代わりに解体し、費用は所有者に請求される
段階が進むほど、選べるものが減ります。助言・指導の段階なら、解体する・売る・貸す・管理を続けるのどれも選べます。代執行まで進むと、業者も金額も時期も選べないまま解体され、その費用を請求されます。
金額の面でも不利です。自分で手配すれば複数社から見積もりを取って比べられますが、代執行にその余地はありません。
まだ決められないときにできること
「解体したほうがいいのは分かるが、決められない」という状態のまま時間が過ぎるのが、いちばん多いパターンです。選択肢は解体だけではありません。
| 選択肢 | 向いている場合 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 解体して更地にする | 建物に価値がなく、土地に需要がある | 解体費用と、軽減が外れたあとの固定資産税 |
| 古家付きのまま売る | 建物がまだ使える、または土地の需要が強い | 不動産会社の査定額と、解体費用の比較 |
| 貸す・活用する | 立地に賃貸需要がある | 改修費用と、貸せる状態にするまでの期間 |
| 管理を続ける | 使う予定がある、まだ決められない | 管理代行の費用と、勧告のリスク |
決められない理由が「金額が分からないこと」なら、先に数字を集めるだけでも状況は変わります。解体の見積もり、不動産会社の査定、管理代行の費用の3つを並べれば、比較できる材料が揃います。いずれも依頼した時点で契約にはなりません。
決められない理由が「兄弟や親族と合意できないこと」なら、数字を揃えて共有するところから始めるのが早道です。金額が見えないままの話し合いは、結論が出ません。
補助金を使える自治体もあるので、解体を選択肢に入れる場合は制度の有無を先に確認してください。多くの制度が着工前の申請を条件にしているためです。
この先で迷いやすいところ
放置をやめると決めたあと、手続きで止まることがあります。
- 特定空家と管理不全空家の違い — 国の参考基準で自分の家の状態を照らす
- 共有名義の家を解体するには — 全員の同意と、連絡が取れないときの手続き
- 相続放棄した家の解体義務は誰にあるか — 民法940条の改正点
- 解体しない選択肢 — 貸す・空き家バンク・管理を続けるの比べ方
- 実家じまいの進め方 — 何から手をつけるかと、金額を揃える順番
よくある質問
誰も住んでいませんが、月に一度は換気に行っています。それでも「放置」になりますか?
いいえ。空家法が対象にするのは、そのまま放置すれば倒壊等の危険がある状態や、著しく衛生上有害な状態などです。定期的に換気・通水・草木の手入れをして管理できていれば、直ちに措置の対象になるものではありません。ただし判断は市町村が個別に行うため、状態が心配な場合は自治体の空き家担当窓口に相談してください。
遠方に住んでいて管理に行けません。代わりに見てもらう方法はありますか?
自治体がシルバー人材センターや地元事業者と連携した空き家管理サービスを紹介している地域があり、民間の管理代行サービスもあります。費用は巡回の頻度と作業範囲で変わるため、複数の見積もりを取って比べてください。管理を続けるか手放すかを決めかねている間、結論を先送りできる方法として使えます。
兄弟と共有名義になっていて話がまとまりません。とりあえず放置しても大丈夫ですか?
共有名義でも、措置や賠償の責任がなくなるわけではありません。建物の取り壊しは共有者全員の同意が必要になるため、話がまとまらないまま時間が経つと選択肢が狭まります。まず固定資産税の課税明細と登記事項証明書を取り寄せて現状を共有し、それでも折り合わない場合は司法書士や弁護士に相談してください。
行政代執行になると、費用はどうなりますか?
代執行にかかった費用は所有者に請求されます。自分で業者を選んで見積もりを比べる余地がないまま金額が決まるため、負担が軽くなることは期待できません。命令の段階まで進む前に、自分で解体するか売却するかを決めておくほうが、金額も時期も選べます。
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