安全に関する注意
税金の取扱いは、その建物をどう使っていたか、いつ取り壊したか、いつ売ったかによって変わります。この記事は国税庁が公表している区分の整理で、個別の可否を判断するものではありません。金額が大きくなる手続きなので、申告の前に税務署か税理士に確認してください。
解体費用が税金の計算に入るかどうかは、その建物をどう使っていたかで決まります。同じ工事でも、売るために壊したのか、貸していた建物を壊したのかで扱いが変わります。
そして、解体しただけでは何も起きない場合があります。自分が住んでいた家を壊して土地を持ち続けるなら、その年に控除されるものはありません。
まず区分を確認してください。
4つの場面
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 土地を売るために取り壊した | 取壊し費用と建物の損失額が譲渡費用 |
| 建物付きの土地を買い、当初から土地利用が目的だった | 建物の購入代金と取壊し費用が土地の取得費 |
| 賃貸していた建物を取り壊した | 資産損失として必要経費に |
| 自分が住んでいた家を壊し、土地を持ち続ける | その年に控除されるものはない |
自分がどれに当たるかで、必要な書類も申告の時期も変わります。
土地を売るために取り壊した場合
国税庁は譲渡費用となるものの一つに「土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額」を挙げています(No.3255)。
譲渡費用は、売った金額から差し引いて譲渡所得を計算するものです。つまり土地を売った年の申告で使います。解体した年に単独で控除されるわけではありません。
一方、譲渡費用にならないものも明示されています。
- 修繕費や固定資産税など、資産の維持や管理のためにかかった費用
- 売った代金の取立てのための費用
空き家を残していた間の固定資産税や、草刈り・見回りにかかった費用は含まれません。 ここは誤解されやすいところです。
古家を残して売るか更地にして売るかの判断は、古家付きで売るか更地にして売るかにまとめています。
買った土地の上の建物を壊した場合
自分で買った土地に古い建物が付いていて、それを取り壊した場合は扱いが変わります。
国税庁は取得費となるものとして「建物付の土地を購入して、その後おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用」を挙げています(No.3252)。
この場合は土地の取得費に含まれます。将来その土地を売るときの計算に関わってきます。
「当初から土地の利用が目的であったと認められる」かどうかが要件です。購入から取壊しまでの期間や、その間の使い方が判断の材料になります。
賃貸していた建物を取り壊した場合
アパートや貸家を取り壊した場合は、資産損失として扱われます。ここで金額の扱いを分けるのが事業的規模かどうかです。
国税庁は形式基準を示しています(No.1373)。
| 種類 | 事業とされる規模 |
|---|---|
| 貸間・アパート等 | 貸すことのできる独立した室数がおおむね10室以上 |
| 独立家屋 | おおむね5棟以上 |
事業として行われている場合は、資産損失の全額をその年の必要経費に算入できます。それ以外の場合は、その年の不動産所得の金額が限度になります。
貸家1棟、アパート1棟という規模では後者に当たることが多くなります。取り壊した年の家賃収入が少ないと、損失を使い切れないことになります。
取り壊す時期を決められる状況なら、税理士に相談してから日程を組んでください。 入居者への対応を含めた進め方は、アパートの解体費用と入居者対応にまとめています。
残しておく書類
どの場面でも、金額を証明できる書類が要ります。
- 解体工事の契約書
- 見積書(内訳が分かるもの)
- 領収書または振込の記録
- 取壊し証明書
- 建物の取得時の資料(購入契約書、建築時の請負契約書)
建物を取得したときの資料は特に探しておいてください。建物の損失額を計算するときに、いつ・いくらで取得したかが必要になります。古い家では見つからないことがあるので、片付けのときに書類を確認してください。
家財を片付けるときの手順は、解体前の残置物の処分費用にまとめています。
相続した空き家を売る場合
相続した家を取り壊して土地を売る場合は、相続空き家の3,000万円特別控除という別の仕組みがあります。
これは譲渡所得から最大3,000万円を控除するもので、譲渡費用の話とは別の制度です。要件を満たせば、両方が計算に関わります。
ただしこの特例には、建物が建てられた時期、取壊しの時期、売却の期限といった細かい要件があります。ひとつでも外れると控除が使えないため、着手する前に確認してください。
税金の取扱いは条件によって変わります。この記事は国税庁が公表している区分の整理なので、申告の前に税務署か税理士に確認してください。
よくある質問
住んでいた実家を解体しました。確定申告で戻ってくるお金はありますか?
解体しただけでは、控除の対象になるものはありません。取壊し費用が意味を持つのは、その土地を売って譲渡所得を計算するときです。売る予定があるなら、工事の契約書と領収書を保管しておいてください。
解体した年と土地を売った年が違います。どちらの年で申告しますか?
譲渡費用は、譲渡所得を計算する年、つまり土地を売った年の申告で使います。解体した年に単独で控除されるものではありません。年をまたぐ場合の扱いは条件によって変わるため、税務署か税理士に確認してください。
アパート1棟を取り壊しました。全額を経費にできますか?
貸付けが事業として行われている規模かどうかで変わります。おおむね5棟または10室以上という形式基準を満たす場合は全額を必要経費に算入でき、それ以外はその年の不動産所得の金額が限度になります。1棟だけの場合は後者に当たる可能性が高いので、税理士に確認してください。
相続空き家の3,000万円控除と、譲渡費用は両方使えますか?
別の仕組みなので、要件を満たせば両方が計算に関わります。ただしこの特例には耐震基準や取壊しの時期など細かい要件があり、満たさないと控除そのものが使えません。要件の確認を含めて税務署か税理士に相談してください。
関連する記事
-
相続した空き家の3,000万円控除|解体が要件になる条件と期限の数え方
相続した空き家を売るときに使える3,000万円特別控除について、対象になる家屋の条件、解体または耐震改修が要件になる理由、3年の期限の数え方、市区町村で確認書を取る手順を、国税庁の公表内容にもとづいて整理しました。
-
解体工事の前に必要なアスベストの事前調査と、その結果の報告制度を整理しました。報告が必要になる工事の規模、義務を負うのは元請業者であること、2023年10月と2026年1月に変わった有資格者の要件、現場での掲示と記録の保存について説明します。
-
共有名義の建物を解体するときに必要な同意の範囲を民法の条文にもとづいて整理しました。共有者の一人と連絡が取れない場合や所在が分からない場合に使える裁判所の手続き、費用の負担割合、相続登記が済んでいないときの順番まで説明します。