解体工事で隣の家にひびが入ったら|賠償するのは業者、施主は原則負わない

カテゴリ: 見積書と業者選び

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目次
  1. 誰が責任を負うか
  2. 言われたときの手順
  3. 工事が原因かを確かめる材料
  4. 直す範囲と請求の期限
  5. 契約前に決めておくこと

解体工事で隣の家にひびが入ったとき、損害を賠償するのは工事をした業者です。民法716条は、注文者(施主)は請負人が第三者に加えた損害の賠償責任を負わないと定めています。

ただし、注文や指図に施主の過失があった場合は別です。そして、ひびが工事によるものかを確かめるには、着工前の記録が要ります。

以下は民法と建設業法の条文(e-Gov法令検索)と、国土交通省の公共工事の要領によるもので、確認したのは2026年9月です。個別の事案で責任がどうなるかは、弁護士に相談してください。

誰が責任を負うか

立場 民法での扱い 条文
工事をした業者(現場の作業員) 過失で他人の権利を侵害すれば賠償責任 709条
作業員を使っている会社 被用者が事業の執行で加えた損害を賠償 715条1項
施主(注文者) 原則として賠償責任を負わない。注文・指図に過失があれば別 716条

民法716条の本文は「注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない」です。ただし書で「注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない」としています。

施主が危ない工法を指示したり、安全対策を削るよう求めたりすると、このただし書に近づきます。工法や養生は業者に任せ、費用を下げたいときも安全にかかわる項目は削らないでください。

言われたときの手順

  1. 内容(場所、ひびの長さや幅)と日時、相手の名前を記録する
  2. その場で修理や金額を約束しない
  3. 工事をした業者に伝え、現地を一緒に見てもらう
  4. 着工前の写真や家屋調査の記録と見比べる
  5. 業者の保険の対応と、修理の方法を業者と隣人で話し合ってもらう

施主が隣人と直接話し合って金額を決めてしまうと、業者との話が食い違います。窓口は業者にして、施主は経過を見守る形にしてください。

近隣対応まで含めて業者を比べる

工事が原因かを確かめる材料

ひびが工事の前からあったのか、工事で生じたのかは、あとからでは分かりにくいものです。

国土交通省の公共工事の要領は、工事で周辺の建物に損害が出るおそれがあるときは、工事の着手に先立ち建物の配置や現況を調べ、損害の申し出があれば工事との因果関係を調べるとしています。民間の解体工事に直接当てはまる決まりではありませんが、考え方は同じです。

材料 中身
着工前の写真 隣家の外壁、基礎、塀、車庫を日付入りで撮る
家屋調査 調査会社などが隣家の室内外のひびや傾きを記録する(隣人の了解が要る)
工事の記録 重機を使った日、振動の大きい作業をした日

要領は、工事の工程と損害の発生の時間的な関係、工事箇所と損害の位置関係なども、因果関係を判断する事項に挙げています。工事の日報を業者に残してもらうと、確かめる材料になります。

直す範囲と請求の期限

公共工事の要領では、負担する費用は原則として原状回復の費用とし、建物の使用目的や損害の状況、経過年数などを総合して合理的な範囲で決めるとしています。

損傷の程度 原状回復の方法(要領)
仕上げ部分だけの損傷 壁・床・天井などの仕上げを補修する
構造部分の損傷 基礎・土台・柱などを矯正して補修する
全体に及ぶ損傷 同等の建物を建てる

請求の期限は、民法724条で、損害と加害者を知った時から3年、工事の時から20年です。工事から時間がたって申し出があることもあるので、着工前の記録は工事後も保管してください。

契約前に決めておくこと

建設業法19条1項9号は、請負契約書に「工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め」を書くよう求めています。

契約前に確かめたいのは次の3つです。

  1. 契約書に、第三者の損害の賠償を業者が負担すると書かれているか
  2. 業者が損害賠償責任保険に加入しているか(加入の証明を見る)
  3. 着工前に隣家の写真を撮るか、家屋調査をするか、その費用はどちらが持つか

近隣への挨拶と、写真を撮る場所は解体工事の近隣挨拶で、契約書に書く16項目は解体工事の契約書で説明しています。

よくある質問

隣の人から施主の自分に直接「直してほしい」と言われました。

その場で金額や修理を約束せず、内容と日時を記録して、工事をした業者に伝えてください。民法716条により、注文者は注文や指図に過失がなければ請負人の加えた損害の賠償責任を負いません。業者と隣人のあいだで因果関係を確かめる流れにつなぐのが、施主の役目です。

施主の「過失」になるのはどんな場合ですか?

条文は「注文又は指図についてその注文者に過失があったとき」としており、具体的に何が当たるかは事案ごとに判断されます。危ない工法を施主が指示した、安全対策を削るよう求めた、といった関わり方をしないことが、この例外に近づかない方法です。判断が必要な場面になったら弁護士に相談してください。

工事が終わって何か月もたってから言われました。

不法行為による損害賠償の請求権は、損害と加害者を知った時から3年、工事の時から20年で時効になるので、数か月後の申し出でも請求はできます。そのぶん、工事の前からあったひびかどうかを確かめる材料が大切になります。着工前の写真や家屋調査の記録を探してください。

業者が保険に入っていれば安心ですか?

業者が加入している損害賠償責任保険で対応されることがありますが、補償の範囲や免責の条件は保険ごとに違います。契約前に加入の証明を見せてもらい、隣家の損害が対象になるかを業者に確認してください。

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