解体工事の近隣トラブルは、起きてから対応するより着工前に手を打つほうが軽く済みます。
やることは3つです。回る範囲を決める、工期と連絡先を伝える、そして着工前に写真を撮ることです。
3つ目が抜けやすく、抜けたまま工事が終わると確かめる材料がなくなります。
回る範囲
法律で決まっているわけではありません。実務上の目安です。
| 対象 | 理由 |
|---|---|
| 両隣 | 騒音・振動・粉じんが最も届く |
| 向かい3軒 | 道路を挟んでも粉じんとトラックの出入りが及ぶ |
| 裏3軒 | 敷地が接しており、塀や樹木の影響がある |
| 工事車両が出入りする経路の数軒 | 通行と駐車で迷惑がかかる |
裏の家は見落とされやすいところです。玄関が別の道路に面していると、工事に気づかないまま音と振動だけが届きます。
集合住宅が隣接している場合は、管理会社や管理組合にも連絡してください。掲示板に貼ってもらえることがあります。
時期と、誰が行くか
着工の10日前から3日前までが目安です。ライフラインの停止を手配する時期と重なります。
早すぎると忘れられ、直前だと予定を変えられません。この幅に収めてください。
施主と業者の両方が行くのが基本です。業者だけだと、誰の家の工事なのかが伝わりません。工事後にその土地を売る場合でも、近隣との関係は残ります。
遠方で行けない場合は、挨拶状に施主の氏名と連絡先を入れて業者から渡してもらってください。
挨拶状に書くこと
口頭だけだと残りません。書面を用意して、不在ならポストに入れます。
- 工事の場所と、建物の概要
- 工期(着工日と完了予定日)
- 作業する時間帯と、休む曜日
- 工事の内容(重機を使うか、手壊しか)
- 現場責任者の氏名と連絡先
- 施主の氏名(連絡先を載せるかは判断による)
5番が要点です。 苦情の連絡先を現場責任者にしておくと、施主を経由せずに話が進みます。
作業時間については、地域によって法律や条例の制限があります。第1号区域では午前7時から午後7時まで、1日10時間までが基準です。詳しくは解体工事の騒音と振動の規制にまとめています。
着工前に写真を撮る
工事のあとで「ひびが入った」「塀が傾いた」と言われることがあります。
そのときに必要なのが、着工前の写真です。工事の前からあったものかどうかを確認できます。
撮っておく場所です。
- 隣家の外壁(とくに解体する建物に面した側)
- 隣地の塀、フェンス、門柱
- カーポート、車庫、物置
- 道路の舗装と側溝
- 敷地の境界標
境界標は特に撮ってください。重機の作業で動いたり埋まったりすることがあり、動くと土地の売却手続きが止まります。
写真は日付が分かる形で保存してください。スマートフォンで撮れば日時が残ります。
苦情が来たときの受け方
工事中の連絡は、次の順で処理します。
- 内容と日時、相手の名前を記録する
- その場で金額や対応を約束しない
- 現場責任者に伝える
- 業者からどう対応したかの報告を受ける
- 必要なら施主から改めて連絡する
その場で約束しないことが大切です。現場の状況を知らないまま「直します」と答えると、後で業者との話が食い違います。
損害を主張された場合は、業者が加入している損害賠償責任保険で対応されることがあります。保険の加入状況は契約前に確認しておいてください。
業者選びとの関係
近隣対応は、見積書の金額に表れます。
| 項目 | 見るところ |
|---|---|
| 養生シート | 防音タイプか、防じんのみか |
| 散水 | 粉じんを抑える手当てが入っているか |
| 近隣挨拶 | 業者が回るか、施主任せか |
| 損害賠償責任保険 | 加入しているか、内容は何か |
| 現場責任者 | 誰が常駐するか |
安い見積もりでは、養生が簡易になっていることがあります。 金額だけでなく、この5項目を揃えて比べてください。
工事全体の段取りは解体工事の流れ、業者の見分け方は解体業者の選び方にまとめています。
よくある質問
遠方に住んでいて挨拶に行けません。業者だけでもよいですか?
業者だけでも工事は進みますが、施主の名前が出ないと近隣の受け止め方が変わります。行けない場合は、挨拶状に施主の氏名と連絡先を入れて業者から渡してもらってください。工事後に土地を売る予定があるなら、近隣との関係は残ります。
手土産は必要ですか?
決まりはありません。タオルや洗剤など500円から1,000円程度のものを持参する例が多くあります。品物より、工期と作業時間、連絡先を伝えることのほうが実質的です。
工事中に苦情の電話が来たらどうすればよいですか?
内容と日時を記録し、現場責任者に伝えてください。施主が直接対応しようとすると、現場の状況が分からないまま板挟みになります。挨拶のときに現場責任者の連絡先を伝えておくと、施主を経由せずに話が進みます。
隣家から「工事で壁にひびが入った」と言われました。
着工前の写真があれば、工事の前からあったものかどうかを確認できます。写真がない場合でも、業者が加入している損害賠償責任保険で対応されることがあるので、まず業者に連絡してください。自分の判断で金額を約束しないでください。
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