借地の上に建つ家の解体費用は、原則として建物の持ち主である借地権者が負担します。民法は、賃貸借が終わったときに借主が附属させた物を収去する義務を定めているためです。
ただし、存続期間が満了して更新しないときは、借地借家法13条で地主に建物を時価で買い取るよう請求できます。また期間中に先に壊すと、更新を求める権利や第三者に対抗する力を失うおそれがあるので、壊す順番に注意が要ります。
以下は借地借家法と民法の条文(e-Gov法令検索)で、確認したのは2026年9月です。個別の契約でどうなるかは契約書と事情で変わるため、話し合いの前に弁護士か司法書士に相談してください。
終わり方で負担が変わる
| 借地の終わり方 | 建物の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 存続期間が満了し、更新しない(普通借地) | 借地権者は地主に建物の買取りを請求できる | 借地借家法13条1項 |
| 定期借地権で期間が満了 | 買取りを請求しない特約を付けられる。更地で返す前提 | 同法22条1項 |
| 地主と合意して解約する | 解体費用の負担は合意で決める | 契約の内容による |
| 賃貸借が終わり、買取りの請求もしない | 借主が附属させた物として撤去する | 民法599条1項(622条で準用) |
民法599条1項は、借主が借用物に附属させた物を、契約が終わったときに収去する義務を定め、622条でこれを賃貸借に準用しています。借地の上の家を借主が撤去して返すという原則は、この規定から来ています。
期間満了なら建物の買取りを請求できる
借地借家法13条1項は、借地権の存続期間が満了し、契約の更新がないときは、借地権者が地主に対し、建物などを時価で買い取るよう請求できると定めています。
解体してから土地を返すと、この請求の対象になる建物が無くなります。期間満了が近い場合は、壊す前に次を確かめてください。
- 契約書の存続期間と、満了日
- 更新の協議が始まっているか
- 地主が建物の買取りに応じる考えがあるか
時価がいくらになるかは建物の状態で変わり、古い家では低くなることもあります。買い取った建物を地主が壊すなら、その費用は地主側の負担になります。
定期借地は更地で返す前提
借地借家法22条1項は、存続期間を50年以上とする借地権で、更新がなく、建物の築造による延長がなく、13条の買取りを請求しないと定めることを認めています。この特約は公正証書などの書面でします。
契約書にこの特約があれば、期間満了までに建物を撤去して返すことになります。解体費用は借地権者の側で準備しておくものです。
同法24条には、設定から30年以上たった日に建物を地主に相当の対価で譲渡する特約付きの借地権もあります。自分の借地がどの種類かは、契約書の表題と特約で確認してください。
期間中に先に壊すと失いうるもの
使わない家だからと、期間の途中で先に壊すと、次の問題が出ることがあります。
| 失いうるもの | 条文の中身 |
|---|---|
| 更新の請求 | 更新の請求や使用継続による更新は「建物がある場合に限り」(5条1項・2項) |
| 第三者への対抗力 | 登記した建物があることで対抗できる。滅失後は掲示で2年まで(10条1項・2項) |
| 期間の延長 | 取壊し後に長く続く建物を建てても、延長は地主の承諾がある場合に限る(7条1項) |
5条1項は、存続期間の満了時に更新を請求できるのを、建物がある場合に限っています。7条1項は、借地権者による取壊しも「滅失」に含むとしています。
10条2項は、建物が無くなっても、建物を特定する事項、滅失の日、新たに建物を建てる旨を土地の見やすい場所に掲示すれば対抗力が続くとしています。ただし滅失から2年を過ぎると、それまでに建物を建てて登記していなければ効力を失います。
土地が売られた場合に新しい地主へ借地権を主張できるかにかかわるので、壊す前に確認しておきたい点です。
1992年8月より前の借地は旧法の例による
借地借家法は1992年8月1日に施行されました。それより前に設定された借地権には、附則で経過措置が定められています。
| 事項 | 施行前に設定された借地権の扱い |
|---|---|
| 建物の朽廃による消滅 | なお従前の例による(附則5条) |
| 契約の更新 | なお従前の例による(附則6条) |
| 滅失後の再築による期間の延長 | なお従前の例による(附則7条) |
| 掲示による対抗力(10条2項) | 施行前に建物が滅失していた場合は適用しない(附則8条) |
相続した借地では、親や祖父母の代に設定された契約であることがあります。どちらの規定で扱われるかで、壊したあとの影響が変わるので、契約書の設定日を確認し、専門家に相談してから解体の時期を決めてください。
壊す前にそろえるもの
- 借地契約書(設定日、存続期間、特約)
- 建物の登記事項証明書(名義と、登記されているか)
- 地代の支払いの記録
- 解体の見積もり(負担の話し合いに使う)
建物が親の名義のまま登記されている場合の順番は相続登記と解体はどちらが先かで、解体費用の目安は解体費用の相場で説明しています。
よくある質問
地主から「建物を壊して土地を返してほしい」と言われました。解体費用はこちら持ちですか?
終わり方で変わります。存続期間が満了して更新しない場合は、借地借家法13条で建物の買取りを地主に請求できるので、壊して返す前に買取りを求める余地があります。合意で解約する場合は、解体費用の負担を合意の中身として決めることになるので、署名する前に弁護士か司法書士に相談してください。
借地の家を相続しましたが、使う予定がありません。先に壊してもよいですか?
壊す前に契約書で残りの期間と更新の条件を確かめてください。更新の請求は建物がある場合に限られ、建物を壊すと第三者に借地権を主張する根拠(登記した建物)も失います。売却や地主への買取りの相談をしてから壊す順番のほうが、選べる道が多く残ります。
定期借地の家です。何を確認すればよいですか?
契約書に、更新がないこと、建物の買取りを請求しないことが書かれているかを確認してください。借地借家法22条は、これらの特約を公正証書などの書面で定めるとしています。書かれていれば、期間満了までに建物を撤去して返す前提で解体の時期と費用を準備します。
解体費用の相場は普通の家と同じですか?
工事そのものは同じなので、費用の目安も構造と坪数で変わります。借地で違うのは、誰が負担するかと、壊してよい時期です。見積もりは早めに取り、地主との話し合いの材料として金額を持っておくと交渉が進めやすくなります。
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